『真ん中』が、消える — 20世紀型ジュエリーショップの、これから

# 「真ん中」が、消える — 20世紀型ジュエリーショップの、これから

戦うつもりはありません。
だからこそ、冷静に見えることがあります。

ここ数日、海外のAI業界で大きな動きがあって、それを見ながら考えていました。
そのうち、ジュエリー業界にも同じ構造の話が来ます。
業界の方からはお叱りを受けるかもしれませんが、観察として書き残しておきたい。

結論から書きます。
業界全体が消えるのではなく、**二極化して、真ん中が消えます**。

## いま起きていること

ひとつめ。婚姻数の縮小。
2025年の婚姻は50万5,656組。戦後3番目の少なさです。
2年連続で増えてはいるものの、長期トレンドは下です。
ブライダル市場の母数自体が、20世紀のままではいられない。

ふたつめ。職人の高齢化。
研磨も、石留めも、人手が足りない。
ベテランの引退が、新しい入職者の数を上回り続けている。
これは数字の話ではなく、現場の体感の話です。

みっつめ。AIが買い物の入口を変えはじめている。
近い将来、お客様自身が一軒一軒店を回るのではなく、
AIが「結婚指輪を予算◯◯万円で、デザイン傾向はこのあたりで」と先に絞り込む時代が来ます。
すでに兆しは出ていて、半年から一年でかなり風景が変わると思います。

この三つが重なると、何が起きるか。

## 20世紀型ジュエリーショップが最適化されてきた前提

20世紀型のジュエリーショップは、こういう前提で最適化されてきました。

– お客様が物理的に店舗に来る
– 店舗の在庫から、実物を見て決める
– 販売員の接客が差別化の中核
– 家賃と人件費が固定費の大部分

この前提が、これから順番にひっくり返ります。

お客様は、もう先にAIで絞り込んでから来店する。
実物確認はARや3Dビューワーで代替が進む。
接客はAIが24時間、お客様の過去履歴と趣味を踏まえて行う。
在庫は3Dデータと受注後製造で十分。

そうなると、**一等地店舗網は、来店客が減った瞬間に最大の弱みに転じます**。
固定費は、売上を圧迫する重荷に変わる。

## 生き残る両端

上端は、ハイエンドのラグジュアリーブランド。
銀座本店のソファに座る体験そのものに、数百万円を払う層がいるから。
むしろAI時代になればなるほど、人が手で接客するという行為そのものが、プレミアム化する逆説が起きます。

下端は、デジタルネイティブで設備投資が軽い新興プレイヤー。
固定費が軽く、データ・3D・AIの窓口を資産として持っている。
AIから「呼ばれる側」にいる。

## 消えるのは中間層

消えるのは、その間にいた中間層です。

一等地に複数店舗、客単価10万〜30万円帯、接客力と店舗網が強み。
ここがいちばん苦しい。

固定費は重く、ラグジュアリーほどのブランド体験はなく、デジタルネイティブほどの構造的軽さもない。

## 大手のジレンマ

大手も座視はしません。

オンライン強化、カスタマイズ受付の拡大、3Dビューワー導入、AIチャット接客、店舗のリニューアル。
打ち手は予想できます。

ただ、ここに大きなジレンマがあります。

多店舗網を持つ会社がデジタル化を本気で進めると、
**自社の店舗網と販売員の存在意義を、自ら否定することになる**。
「Webで完結できますよ」と言った瞬間に、なぜ全国50店舗が必要なのかという問いが、社内で発生する。

だから本気でデジタルに振り切れない。
中途半端な「Webで見積もりだけ→来店誘導」止まりになりがちです。
これは経営学の教科書に出てくるイノベーションのジレンマ、そのもの。

## 30年の中で何度も見てきた構造

私自身、1996年にジュエリー業界で3D-CADを使い始めてから、30年近くこの世界のデジタル化に関わってきました。

業界の中の人として、いろいろな立場で、いろいろな会社のデジタル化を見てきています。
そのなかで何度も感じてきたのは、「本気でデジタルに寄せると、組織の中で必ず反発が起きる」という構造でした。

いま自分の会社で同じ仕事をしているのは、その積み重ねが大きいと思っています。

## 製造のコントロールが効く局面

もう一つ、これは私たちにとって幸運な巡り合わせなんですが。

大手の多くは自社工場を持っていません。
山梨の協力工場に発注して、自社は販売とブランディングに専念するモデル。

平常時には合理的な分業ですが、
職人の高齢化と需要のデジタル化が同時に進む局面では、
**「製造のコントロールを持っている側」が、構造的に強くなります**。

私たちの会社は、1971年に東京で創業して、2024年に山梨に本社を移しました。
東京から地方へ流入する側です。
製造のコントロールも、3Dデータも、AIに語ってもらうための準備も、全部、自分たちの手元にあります。

## 業界の上端と下端は残ります。真ん中が、これからの数年で

業界の上端と下端は残ります。
真ん中にいる方々がどう動くか、これからの数年で、業界の景色が変わると思います。

## 少しだけ、私たちが用意したものの話を

スマホの画面でリングをタップすると、ダイヤが置かれる。
ふたつのリングが並んで、価格はその場で動く。
お客様自身が、ふたりで、指で置いていく。

**これ、業界の感覚で言うと「ありえない」設計です。**

これまでダイヤを動かしてお見せするのは、店員がパソコンの前に座ってCADを動かしてやる仕事でした。
お客様の前でスタッフが操作してみせる、という前提の作業。
それを、お客様ご自身の手元のスマホに開放してしまった。

何でもないことのように見えるかもしれません。
ただ、業界の中を長く見てきた人ほど、ここで何が起きているか分かると思います。

来店しないと作れない、というルールは、私たちのところにはもうありません。

## 戦うつもりはない

戦うつもりは、ありません。
ただ自分のポジションを正確に理解して、淡々と仕事を進める。
それだけで十分だと思っています。

## ご相談・お問い合わせ

私たちはどう動くか。
このあたりはサロンや、digitaljewelry™ のサービスでお話できます。

– digitaljewelry™ 表参道サロン公式LINE: https://lin.ee/VkBRvk6
– digitaljewelry™ 表参道サロン: 東京都港区南青山3-12-12 南青山312ビル404(完全予約制)
– ブライダル総合: https://digitaljewelry.jp/bridal/

カテゴリー: ジュエリービジネス進化論 パーマリンク

コメントを残す